2020/7/20

 

― PROFILE ―

 

長谷川 唯(はせがわ・ゆい)氏

 

1997年宮城県生まれ。小学校入学時からサッカーを始め、中学1年生の時に日テレ・東京ヴェルディメニーナに加入。2013年から日テレ・東京ヴェルディベレーザへ。各アンダーカテゴリーの代表に選出され、2017年にサッカー日本女子代表デビュー、以降なでしこジャパンの主力選手に。

 

 

―― 

コロナ禍の中、Zoomでお話を伺ったのは日テレ・東京ヴェルディベレーザに所属し、サッカー日本女子代表の中心選手として活躍する長谷川唯選手。まずは、長谷川選手がサッカーを始めたきっかけを教えてください。

 

長谷川

兄二人がサッカーをしていたので、ついて行ったり、公園で一緒にボールを蹴ったりと、自然と始めていました。最初は地元の少年団に入って、男子に混ざってサッカーをしていたのですが、女子チームからも声をかけてもらって。小3からは少年団と女子チームに所属していました。ただ、男子と一緒の少年団のほうが、対戦相手も強いチームが多かったし、レベルも高くて楽しかったですね。

―― 

小学生の頃からプロ選手を目指してました?

 

長谷川

サッカー始めた頃は、女子サッカーの環境のことを知らず、男子と同じだと思っていたんです。だからテレビで男子のワールドカップやオリンピックを見て、プロサッカー選手になりたいと思うようになりましたね。
 

 

―― 

子どもの頃は、どんな性格でしたか?

 

長谷川

昔からずっと、負けず嫌いでした。兄弟の中でも、どんなことに対しても、できるまでやってましたね(笑)。サッカーの課題があるとクリアできるまで、夜になっても帰らずに練習していたこともありました。

 

―― 

長谷川選手は、日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織である日テレ・東京ヴェルディメニーナ(以下、メニーナ)出身ですが、目指すようになったのはいつ頃ですか?

 

長谷川

小学5年生の頃からです。メニーナに入るためにはセレクションがあったので、毎晩公園でひたすら練習をしていました。当時は身体が小さくて、ボールを遠くへ蹴ることが苦手だったんです。だからこそ、何か武器をつけないといけないという想いもあって、とにかくキックの練習をしたのを覚えています。セレクションはメニーナ1本に絞って、目標が明確だったから、それにむけてすごく努力できたんだと思います。

 

―― 

そして今、日テレ・東京ヴェルディベレーザの中心選手であるわけですね。昨年、一昨年とすべての優勝タイトルを獲っていますが、今の心境は?

 

長谷川

勝ちは一つの目的ですけど、それが全てではないと思っています。優勝できたシーズンも、上手くいかない試合もたくさんあって、その中で次の試合にむけて課題を出して、修正するというのを繰り返しやっているんです。だから、優勝できたからOKとはならないですし、絶対王者という感じでもないかなと。今年ももちろん優勝を目指しますけど、一試合一試合でどれだけ成長できるのか、自分たちが成長するためにどうしたらいいのかを考えることが大事だと思っています。

 

―― 

サッカー日本女子代表としては、今年で4年目になりますね。

 

長谷川

初めてなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)に入った時、もう少し早く入りたかったっていう気持ちが大きかった分、若いから頑張って先輩たちについていこうというよりは、先頭に立って中心でやりたい、大きな舞台でどれだけのことができるかを試したいと思っていたんです。その気持ちや目指すところは、今も変わってないですね。

 

―― 

新型コロナウイルス感染症の影響で試合ができない日々が続いています。その中で、どういう課題を持って、チャレンジしていこうと思っていますか?

 

長谷川

私自身、フィジカルの部分がとくに海外選手と比べると劣っていると感じるので、最低限のパワーをつけないといけないと思っています。日本の選手は、一瞬のスピードや距離が長くなると厳しいって言われてますけど、それでも、できるだけ自分のスピードを上げたいと思ってウェイトトレーニングも取り入れてやってますね。得意としている判断・技術のところは今まで通り変わらず成長していければいいかなと思っているので、これというよりは、すべてのレベルを一段階上げていきたいと思っています。

 

 

―― 

お話を伺っていると、長谷川選手は、日々、成長していくために歩んでいるのが伝わってきます。今まで逆境に立たされたり、辛かったことはあったのでしょうか。

 

長谷川

上手くいかないことがあっても、気持ち的に落ち込むことはなくて、どうしたら上手くいくかを考えながらやるのがすごく好きなタイプなんです。とくにサッカーでは、落ち込むことはほとんどなく、上手くできないことも楽しめているというか。挫折そのものよりも、解決策が見つからない状況が続くことが苦しいと思うので、上手くいかない理由を考えて行動すること大事だと思っています。

 

―― 

2020年の東京オリンピックも延期になりました。今の心境をお聞かせください。

 

長谷川

オリンピックが延期になったことは残念です。でも、あえてそれをポジティブに捉えるようにしなければいけないと感じています。女子サッカーの場合、日本は今、絶対的な王者ではないので、世界の先頭に立っている国、現状ではアメリカですが、その国との差を縮めるためには時間が必要だと思うんです。その時間が増えたと考えればすごくポジティブですし、その差を絶対に縮めなければいけないと思っています。小さい頃からワールドカップやオリンピックを夢見て、こういう世界の相手と戦いたい、自分がどういうプレーをしたいかを思い描いてサッカーをしてきたので、結果を残したいという気持ちもありますし、個人としてどれだけプレーできるかも楽しみではありますね。

 

―― 

長谷川選手が未来に描いていることは何でしょうか?

 

長谷川

自分の中で大切にしているのは、“サッカーを楽しむこと”。だからこそ、負けたことも次にどう活かすかを考えながら楽しく前進している感じなんです。サッカー日本女子代表にいるということは、責任を持って結果を出しにいかなければいけないし、女子サッカー界のためにも大事だと思っています。ただ、個人としてはたとえ負けたとしても、楽しくやりきって終われたらいいなと。サッカー人生も、最後まで楽しんで、やりきって終わるというのが目標ですね。

 

―― 

今後、女子サッカー界をどうやって盛り上げていきたいですか?

 

長谷川

最終的には、男子と同じサッカー界になるといいなと思っています。これから、プロ化も進んではいくと思うのですが、まだまだ男子に追いつかないのが現状です。それを同じにするには、結果を出し続けなければいけないと。結果を残すことが、環境を変える一番の近道であり、改善策だと感じるので、代表選手としてプレーしている限り、必死に結果を出しにいかなければいけないと思っています。

 

大変な時期に貴重なお話をありがとうございました。長谷川選手のさらなる活躍に期待しています!

※インタビューは2020年5月20日にZoomにて行われました。

 

写真提供:東京ヴェルディ