2019/2/27

Nanae Suzuki/Number
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― PROFILE ―

 

澤 穂希(さわ・ほまれ)氏

 

1978年東京都生まれ。元サッカー女子日本代表。ポジションはミッドフィールダー。15歳で日本代表に初招集。
2011年のドイツワールドカップでは主将として初優勝に貢献。
同年度の「FIFA女子年間最優秀選手」受賞。日本代表では通算205試合に出場83得点。
2015年8月に結婚、同年12月に現役引退。現在は一児の母。

 

 

―― 

なでしこジャパン主将として活躍し引退された後、現在は子育てとお仕事を両立されています。大変な日々かと思いますが、今日はその辺も含め、澤さんにいろいろとお話をお伺いしたいと思っています。最初に、ここまで長い間、いろんな挫折を経験されてもそれを乗り越え、サッカー選手として素晴らしい活躍をして来られたのは何故だと思われますか?

 

 澤 

現役時代は、怪我があったり、コンディションが上がらなかったりして、悩んだりすることもありました。でも、辞めようと思ったことはありません。振り返ってみると、今まですべてをサッカーに捧げてきました。学生時代も自分の時間や友達との時間を削って練習していましたし、とにかくサッカーに打ち込んできました。どうしてそこまでできたのかといえば、やはり純粋にサッカーが大好きで、それだけはどんな状況にあっても絶対にブレなかった。今の時代、なかなか自分が本当に好きなことに出会えることって多くないと思います。サッカーが好きで、もっと上手くなりたい、頂点を目指したいという思いが常にあって、その気持ちが消えることはなかったです。だからこそ、長い間選手として頑張ってこれたんだと思います。

 

―― 

「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、「サッカーが好き」という気持ちが強さの秘訣なんですね。日本代表ではキャプテンも務められていました。どのようにチームをまとめていましたか?

 

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 澤 

チームが上手く機能して試合に勝っているときは良いのですが、うまくいっていないときは、とにかく全員で話し合いの場を持ちました。23人がいれば、23通りの考えがあります。もちろん、全員が納得する答えを見つけるのはすごく難しいですが、それぞれが思っている事をきちんと伝えなければ意味がないと思います。何か心に抱えていそうな選手を見つけたら、自分から声をかけていました。また、自分の考えもきちんと伝えて、受けた質問に対しては自分なりにアドバイスをしていました。そういった相互コミュニケーションはとても重要だと思います。



チームのパフォーマンスが良い状態では、全員が同じ目標をめざし、何か問題が発生すると、必ずチームで話し合い、問題をそのままにしません。練習時から上手くいかないことは、例え意見がぶつかり合っても、みんなで意見を出し合って、最善の解決策を見つけていきます。サッカーの場合は、全く同じ状況で同じプレーというのは二度と生まれません。だからこそ、何か問題が発生した場合は、そのままにせず、必ず皆の意見を聞き入れ、時には間違った判断もあるかもしれませんが、それも皆で認め合い、共に学んでいく。そういう雰囲気がチームを一つにするんだと思います。

―― 

チーム内のコミュニケーションが何よりも大事なんですね。でも、スポーツの世界では先輩・後輩など上下関係が厳しいこともあるようですが、全員が自由に意見を言えるような雰囲気を作り上げるのは難しくないですか?

 

 澤 

確かに、普段は先輩・後輩という階層があっても、フィールドに立ったらそれは関係ありません。そこは勝つための場所であり、そこには上下関係はあってはならないと思います。もちろん、それ以外の場所では、挨拶だったり、先輩を敬ったりすることはとても大事なこと。でも、一度、フィールドに立ったら、メンバーは勝つための同志です。勝つために必要なコミュニケーションをとるべきです。
米国では、敬語もないので、先輩も後輩も関係なく、その場で何でも言い合います。折角、良い意見があるのにそれが言えないのはもったいないです。

 

―― 

日米サッカーチームでプレーされた経験から、米国と日本の違いについて何かありますか?

 

 澤 

とにかくコミュニケーション能力が違うと感じました。海外では、自分の考えをきちんと人に伝えることをとても大切にしています。日本の学校は授業でも手を挙げる子が少ない。でも、米国の学校ではほとんどの子が手を挙げます。小さい頃から自分の意見を言うことが当たり前の社会です。だから、彼らにとって自己主張することはごく自然な行為です。それぞれの自分の主張があり、それをぶつけ合うことで、チームがより良くなっていくという考えが米国では主流でした。そういえば、フランスの選手は我が強く、いつもいつも主張していましたね(笑)

 

 

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――

弊社も誰もが自分の意見を自由に言える職場づくりを目指していますので、とても参考になります。最後に、世界を相手にサッカーに奮闘してきた澤さんですが、今は仕事と育児の両立に奮闘されているとお聞きしました。

 

 澤 

今はとてもバランスよく仕事と育児を両立できています。でも、それは沢山の人たちに支えてもらっているからこそだと思っています。初めての育児は発熱や卒乳など分からないことが沢山あります。だから、分からないことがあるとすぐにママ友に相談して、いろんな事を教えてもらっています。きっと、子育てには正解はないんだろうと思います。
育児と仕事の両立は寝不足続きでつらくなることもありますが、その時は主人の出番(笑)何かあった時はなるべく主人と話し合うようにしています。家庭でもコミュニケーションはとても大事だと実感しています。

 

―― 

家庭でも仕事でもコミュンケーションが大事ということですね!今日は貴重なお話ありがとうございました。