2019/5/27

 

― PROFILE ―

 

籾木 結花(もみき・ゆうか)氏


1996年アメリカNY州生まれ。帰国後、小学2年生で本格的にサッカーを始め、2009年に日テレ・ベレーザ傘下の日テレ・メニーナに加入。11年、U16日本代表に選出。以後、U17女子W杯、U20女子W杯に出場。17年アルガルベカップでなでしこジャパン初選出。18年アジア大会では2大会ぶりの優勝に貢献した。19年6月開幕の女子W杯フランス大会でも活躍が期待される。

 

 

――

籾木さんには、間もなく開幕するW杯フランス大会での活躍が期待されています。意気込みを聞かせてください。

 

籾木 

自分がこれまでサッカーをやってきて、その本当に最高峰の戦いをできる場なので、挑戦したい思いはもちろん強いです。ただそれは、強い相手と戦いたいというだけじゃなく、ここまで支えてくれた人たちの気持ちに応えたい、私が活躍することで応援してくださる人たちに喜んでほしい、とかいろんな気持ちが詰まっているので、ひと言ではうまく表せません。出たいかと聞かれればもちろん出たいですけど(笑)。

 

――

15歳でU16に選ばれて以来、いつかなでしこジャパンでW杯の舞台に立つというのが夢でしたか?

 

籾木 

中学1年で日テレ・メニーナに入った時から、すぐ近くにベレーザという目標があったので、先輩たちがプレーしているなでしこジャパンという場所だってそんなに遠くない、自分のやるべきことをやって、しっかり努力していればいつかたどり着けるんだ、と感じていました。2011年になでしこが世界一になったことも、自分が今やっていることの先に世界一があるんだという希望をくれた大きな出来事です。だから、ずっと目標ではあったけれど憧れじゃなかった。それは環境に恵まれたと思います。

 

――

昨年10月のリーグ戦では、籾木さんプロデュースの集客プロジェクトを実施したことも話題になりました。あれは大学の卒論研究も兼ねていたんですね。

 

籾木 

そうです。大学ではスポーツビジネスを研究していて、「日テレ・ベレーザの集客活動について」というのが卒論のテーマでした。なでしこリーグの中心的存在であるベレーザだからこそやるべきこと、モデルを示さなければならないことがあるはずだし、それを考えることは日本女子サッカー界の将来のために必要だと思ったんです。最終的に4万字ぐらいの論文になりました。

 

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満員の5,000人を目標にしたプロジェクトで、4,600人以上が来場したわけですから大成功ではないでしょうか。

 

籾木 

ただ、その翌週は優勝チームが決まるかもというタイミングだったのに動員はまた大きく落ち込んでしまって、課題はまだまだ多いと思いました。来場者のアンケートを見ると、ほとんどが2011年のなでしこ優勝のあと何回かはスタジアムに来たことがあるという方々でした。決して女子サッカーに関心がないわけではない人たちに、継続して足を運んでもらうにはどうするかが今後の課題だと思います。

 

――

この春からは社会人になりましたが、サッカーを核にしていろいろなビジネスを展開する若い会社ですね。籾木さんのような選手のキャリア選択としては珍しいのではないですか?

 

籾木 

なでしこが優勝した時、メディアはレジ打ちをしながらサッカーを続けた選手たちが世界一に…という美談にしましたが、選手の側にとってそれはいい話でもなんでもなくて、モヤモヤした気持ちがずっとあったんです。今の会社は、私がサッカー選手であることを前提に、選手としてのスケジュールやコンディショニングにも最大限配慮してくれます。

プロとしてサッカーに専念することができないから、とりあえず生活のための仕事をしながら…という状況を変えたいんです。それ以外のモデルを私が示したい。女子サッカー選手は、人間的にすばらしい人たちが多いことを知っているから、一人ひとりの人間力を生かしたキャリアの可能性を広げたい。自分がその先駆者になれたらと思います。

 

――

集客プロジェクトを成功させる才覚もある、サッカー選手のキャリアのあり方に問題意識も持っている。そんなご自分の将来像をどう描いていますか?

 

籾木 

まだそんなにちゃんと考えてなくて、好きなことをやって楽しく暮らしたい、というぐらいです(笑)。もちろんサッカーでも目標は全部かなえたい。でも一方で、自分がサッカーだけを一生ずっとやってるともあまり思えなくて、もしもプロ契約してくれるチームがあったとしても、空いた時間で絶対他のことをやると思います。将来は全然違う分野に飛び込んでいるかもしれません。

 

 

──明るく前向きな籾木さんですが、チームでも代表でも大きな責任を背負う立場です。ストレスはたまりませんか?

 

籾木

最近本を読んで知ったんですけど、宇宙の70%について人間は何ひとつわかっていなくて、少しわかっているのが25%、私たちが理解している部分はたった5%ぐらいなんだそうです。私の悩みなんて、その5%のうち何%になるんだろう…と思うと、なんだかどうでもよくなってきて(笑)。悩みって、本人にとっては大きく見えますけど、本当はちっぽけなものなんだと考えるようにしています。

 

──籾木さんが大舞台でも強い理由を垣間見た気がします。これからも籾木さんにしかできないことにどんどんチャレンジしてください。ありがとうございました。

 

写真提供:朝日新聞社