2023/7/12

 

― PROFILE ―

 

山本 りさ(やまもと・りさ)氏

 

1985年生、東京出身。中学・高校はハンドボール部を掛け持ちしながら小金井SCでプレー。早稲田大学に進学し、ア式蹴球部女子で2005年度インカレ優勝。大学卒業後は食品会社に就職するも、国体参加をきっかけにサッカーに復帰し、東京電力女子サッカー部マリーゼに入団。2011年の震災の影響を受け、ASエルフェン狭山FCへ移籍。

2012年ベガルタ仙台レディースを経て2015年シーズンで現役引退。アディダスジャパンに就職した後、2017年から公益財団法人日本サッカー協会でなでしこジャパンのチーム総務担当を務め、縁の下の力持ちとして日本女子代表を舞台裏から支えている。

※インタビューは2023年6月に行ないました。

 

 
拡大
 

―― JFA職員としてなでしこジャパンをサポートする総務の業務内容とは?

 

 山本 

代表チームの国内合宿や海外遠征、交通手段やホテルなどの宿泊施設の手配、大会のレギュレーション確認、メンバー登録、対戦相手との調整を含めた全体のスケジュール管理を行っています。国内はもちろん、海外の現場にも帯同し、現地でもチーム周りの調整を行う等、内容は多岐にわたります。海外遠征が多い代表チームの選手を、無事に活動を終えて、それぞれの自宅に送り届けるのが私の仕事になります。

 

―― 幼少期はカナダで過ごされたそうですね?

 

 山本 

カナダに滞在した2年半ほどの期間では、スキーや、アイススケート、ローラーブレードなど色々なスポーツに触れられました。カナダのスポーツはシーズン制だったので年間の半分はサッカーと野球をそれぞれやっていました。日本人がいない環境だったこともあって英語は生活の中で身につきました。

―― なでしこリーグで選手として活躍した山本さんにとって、なでしこジャパンとの最初の関りは?

 

 山本 

身近に感じ始めたのは(東京電力女子サッカー部)マリーゼに所属していた頃、チームメイトの鮫島(彩)選手など何人かが代表に招集されるのを目にしてからです。ただ選手としてはなでしこジャパンに「頑張ってね」と送り出す側でした…(笑)、、選手として悔いなく大好きなサッカーをやり切ったと思っています。

 

―― 現役引退後はスポーツメーカー勤務の後、JFAで現職に就かれました。選手からサポートする立場となり、最初の頃は戸惑いなどありませんでしたか?

 

 山本 

最初に一人で帯同した遠征はアメリカ遠征でした。もう当時の記憶がないくらい必死でした(笑)。選手時代はバスに乗っていれば目的地について「◎分後にアップだからね」と伝えられ、全てチームスタッフにスケジューリングしてもらっていました。それってすごく幸せなことなんだと、総務業に就いて気づかされました。選手は大きなプレッシャーを背負って試合に臨まなくてはいけません。それが代表チームならなおさらです。だからこそ、選手にはピッチのことだけに集中させてあげたい。試合以外のストレスをなるべく取り除いてあげたいというのが私の気持ちです。

 

―― 物事が円滑に進むようにどんな努力をされていますか?

 

 山本 

どれだけ準備をしても、不測の事態は起こり得ます。特に海外遠征ではパスポートがなくなったり、荷物が予定通り届かなかったり色々なことが起こります。そういったことを想定して、事前に対応策を講じていくことが後の自分を助けることになるし、チームのためにもなると思っています。事前に様々な情報共有をスタッフとは行うことを意識していますが、なでしこジャパンの池田太監督もその共有をポジティブに受け入れてくださるのですごく助かっています。

※取材に同席したJFA広報は「彼女は本当にすごく先を見ている。あまりに早すぎて僕らが追いつけていない(笑)」と感嘆する。

拡大

 山本 

私はなでしこジャパンの専任として仕事をさせてもらっているので、そこは本当に大きいですね。誰よりもチームのスケジュールが頭に入っていますし、過去に起こったあらゆる事案を鑑みて対処法をイメージするようにしています。つい最近も遠征先で20個くらいのチーム荷物が届かない事態が発生しましたが、深夜にもかかわらずスタッフみんなが一丸になって助けてくれたことで乗り切ることができました。スタッフ含めとても良い雰囲気でチームは活動ができていると思います。

 

―― スタッフの良い空気感が伝わってきます。7月に迫った女子ワールドカップについていかがですか?

 

 山本 

すごく楽しみです。この日ためにスタッフみんなが準備をしてきたし、一生懸命頑張ってきました。初戦の国歌斉唱を聞くときは、目頭が熱くなるんだろうな…(笑)。いざ、試合が始まると自分の手を離れるというか、「やっとチームをここまで連れて来られた」と思えてホッとします。その瞬間が待ち遠しいです。

 

―― 最後に、なでしこジャパンをサポートすることにどんな想いがありますか?

 

 山本 

まず、この仕事をさせてもらっていることに感謝したいです。そして、池田さんが監督を務めるこのなでしこジャパンが躍動するための最善の準備をしていきたいです。選手、スタッフを含めたチーム全員がピッチだけに集中できる環境を作ることが、私の使命だと思っています。